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再会 九

「……甘えたかったんですか」 「当たり前じゃん。俺が甘えられる相手なんて、楓しかいないじゃん」 「あ……そ、うですか」 へなへなと座り込んでしまう。体は大きくてもまだ成人したばかりの青年で、ずっと寮に入っていたから甘えさせたことがなかった。 何を独り、身構えてしまったんだろう。 過剰なスキンシップも、寂しさ故か。 「すいません。私自身が誰かに甘えたことがなくて。……つまり親代わりの私に甘えたいから、布団を共にしたいと」 「……うーん、まあそんな感じでいいよ」 「分かりました。夕餉の準備中の晤郎さんに聞いてみましょう。貴方が今日寝る場所もきっと彼が色々考えてくれていたはずですので」 「行こう、行こう」 嬉しそうな紫呉が、私に手を差し出す。 なのでその手を取って立ち上がった。 忘れていた。この子は、私の前では子どもに戻りたいのだろう。 忘れていたんだ。 「駄目です」  ご飯を盛りながら、呆れた声で言われた。晤郎の顔は開いた口が塞がらんと言わんばかりの冷たい目だ。 「お二人が一緒に寝るとか、何を考えてるんですか。お布団も部屋も用意しております」 「えー、ってか晤郎はもうここで住み込みなの?」 「ええ。旦那様が亡くなってからはずっとここです。色々と外と連絡をしないといけないこともあるし、今は楓様の秘書兼家政婦ですね」 「家政婦。ぷぷぷ。このほうれん草の白和えめっちゃプロっぽい」 「ああ、彼の茄子のお浸しも美味しいですよ。こちら」 「やべー。めっちゃ、かーちゃんって感じ」  ほうれん草の白和え、茄子のお浸し、鯛の煮つけ。鯛はきっと、紫呉が帰ってきたのでお祝いの意味があるのだと思う。  お吸い物を注ぎながら、はしゃぐ紫呉を追い払う。 「お二人、お手が空いているのでしたら運んでください。台拭きはそちら。ポットはもう一度沸騰させてください」 「わー、晤郎かあちゃん厳しい。OKだ。俺拭いてくる」 また品のない元気な足音を立てて紫呉が消えていく。 「全く。どんな育て方をしたんだよ、晤郎さん」 「俺ですか? 貴方が育てたんじゃないですか」 「私は全く何も」

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