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再会 十

晤郎に我儘ばかり言っていた自分が、彼を面倒見ていたとは到底思えない。 したことと言えば、この館の提供と質問に答えたり、話に付き合ったり。 「そう思っているのは楓さまだけですよ」 「まっさか。紫呉さん、こっちに来てください、紫呉さん」 居間のテーブルを拭いていた紫呉が、尻尾を振りながらこっちに走ってくるように見えた。 かわいい。 「テーブル拭いたよ」 「ありがとう。ちょっと質問していいです?」 「どーぞ。上から183、91、」 「何を言ってるのですか。聞きたいのは、私と晤郎さん、どっちが育ての親ですかってこと」 指で自分と晤郎を交互に指さす。 見た目は麗しくはないけど、男前で渋い晤郎と、浮世離れした世間知らずの我儘ミボウジン。 一目瞭然だと思われる。 「え、えー。んんん。晤郎は格好いい兄貴。楓は綺麗なお姉さん? 育て……なあ。んん」 本気で悩みだした紫呉は、身体を大きく傾けて考えだす。悩むことだろうか。 私は私のことしか考えていないと思う。けど晤郎は、旦那様の忘れ形見のように親切だったろうに。 「唇を吸ったり、重ねたり、あと朝起きたら朝起ちしてた時の対処とか、楓が教えてくれたし、あとは晤郎だけど」 「わ、わー!」 何年前の一回だけの行為をなぜ晤郎の前で言うのか。 「……楓さま、あなた精通もしていない子供になにを教えていたんですか!」 「時効! 時効ですし合意ですし、説明よりやって見せる方が楽だし」 「おーい。もう昔の話はあとにして、ご飯食べようよー」

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