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再会 十一

その日の夕食は、何年ぶりかまるでろうそくに火が――ではない。シャンデリアが空から降ってきたような光とでも言おうか。 そんな明るい食卓になった。紫呉は昔も今も、この日が当たらないような屋敷のムードメーカーだ。彼が楽しそうに話すと、こちらも食事が美味しくなる。 「それでさ、バイクの免許取りに夏休みに合宿に参加してさ」 「紫呉さん、ここ、お弁当さん」 向かい合って座っていたのだけれど、口元についているご飯粒を指摘すると、テーブル越しに身を乗り出してきた。 「とって」 「ここです」  ご飯粒をとると、私の指ごと食べられてしまった。 「紫呉」 「いって。楓、晤郎が俺の背中つねった」 「ふふ。抓りがいのありそうな大きな背中ですからね」 大きな子ども。分かって入るのだけど、こんなこと小さな時はよくしてあげていたのだけど、成長したらやっぱり慣れない。 けれど、楽しい食卓は嫌いではないので、とくに注意はしなかった。 「楓、風呂一緒に入ろう」 「紫呉、そろそろ本気で殴るぞ」  晤郎が先ほどからこめかみをピキピキさせている。 「まあまあ、子どもの言うことじゃないですか。三人で入りますか?」 「入りません。お一人ずつどうぞ」 低い声に、ああこれは本当に怒っていると察知した。 なので、紫呉にそれぐらいにしとき、と目で合図する。 紫呉は唇を尖らせながらも、その後は晤郎が困らせるようなことは言わなかった。

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