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再会 十三
「それは……私が拾ったからですね。君の世界に私しかいなかった時期の迷いでしょう」
「迷いじゃねえし。今、こうしてここに帰ってきたってことは本気だよ、俺」
はっきり言えば、恋愛経験のない私でも、彼から違和感を感じていた。
無邪気に装っているのは、何か企んでいるのかなと。ここに帰ってきてから何か不安が頭の片隅に落ちていた。
「俺、初めて会った時からずっと、――ずっと」
「待って。待ってください。ご、晤郎、晤郎さんっ」
胸の中で暴れながら彼の名を呼ぶ。
すると、身を捩った私はバランスを崩して布団の上へ倒れ込む。
腕を掴まれていた彼を道ずれに。
見上げたそこに、濡れた髪を垂らして私を見る彼がいる。
「晤郎呼ぼうとしたら、この唇を塞ぐ」
「なっ」
唇をなぞられて、体中にぞわっとした気持ち悪さが広がった。
唇をなぞったあと、不意に顔が近づいてきたので、ぎゅっと目を閉じた。
声を出せない。力では敵わない。そして押し倒されて自由はない。
ただ目を閉じて、耐えるしかない。
彼の突然の行動に、全身が震えた。
押し倒された私が、――いつかの離れの窓から見た晤郎に重なる。
「紫呉さん、怖い、です」
目を閉じて、言いながら声が震えてどっと涙が込み上げてきた。
けれど涙を抑えられず、ただ一滴目尻をたどって布団へ落ちていく。
あの日、晤郎は嫌だと言いながらキスを受け入れていた。
それなのに泣いていた。私がいるから、拒まなければいけなくて。
私がいなければ、……好きな人を拒むこともなく、あのまま二人は愛し合ったのに。
「な、泣かないで。ごめん。聞いて、ごめんなさい」
身体が軽くなると同時に、焦った紫呉が布団の上から出ると、畳に額を擦りつけて土下座していた。
「違うんだ。俺はもう子供じゃない。こんな場所でミボウジンなんてやってる楓を、幸せにしたい。俺は、楓が好きなんだ」
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