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三日通うから 四
しばらく晤郎に睨まれたが、俺は目線は逸らさなかった。
「てか、一番最初に言う相手を間違えた。言ってくる」
「いい加減にしなさい。あんなに取り乱した楓さんに、何を言うんですか」
「お前だって何もできやしなかったくせに」
此処から連れ去ることも、愛してあげることもできず。
大事に餌をあげて、大事に鳥かごの中にいれるだけ。
閉じ込めて、外を知らないまま、それは本当の幸せではない。
「分かった。今日は言わない。明日から少しずつ、少しずつしみ込ませていく」
朱に交わって溶け込んで同じ色に染まれば怖くない、はず。
知らない感情を、興奮してぶつけてしまった俺が悪い。
ただ、毎日伝えたかった思いが一日で届くはずがない。
ゆっくり、流れおちるように、溶け込んで交わって、包み込む。
「そんで、ちょっと明日、仕事で立て込むんだけど、昼過ぎには顔出すんで、よろしく」
「……マイペースすぎる」
「長期戦だから」
せっかくもう少しでこっちのペースに巻き込んで、添い寝ぐらいはできるかなって思っていたんだけど。
なんだかんだ言って、他人に強く出れない楓は俺に甘い。
これからは警戒されるけど、警戒されるぐらいがちょうどいい。
だって警戒されるようなことがしたいんだから。
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