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三日通うから 六

桜が枯れ落ちて、薄い桃色の絨毯が広がる庭は好きじゃない。 悪夢を見て魘されて、この屋敷をさ迷った次の日、晤郎が庭に花を植えた。 生い茂る木々を、庭師を呼んで整備させすっきり整えた後、毎年、一種類ずつ花を植えだした。 私は晤郎の植えた花は好きだけど、どうしてもこの庭は好きじゃない。 きっとそれは、庭の中心で主張している大きな桜の木のせいだろう。 「ひまわりは、藤の花の横に植えようと思います」 「……もう買ってきたの?」 庭に肥料と土と、スコップとレンガが置かれている。 昨日の今日で、用意が早い。 「時期には少し早いのですが、のんびりと手入れしつつ準備したかったので」 「ふうん」 どうせなら食べられるものを植えたらいいのに。 そう思っても、億劫で口が開かない。 「晤郎さん、ちょっと眠くなりました。お昼ご飯ができたら起こしてください」 「あ、寝るならせめて、部屋に戻ってねてください」 「やだよ。ここが一番、日当たりがいいじゃん。お昼ご飯は、あの緑色の麺の甘い汁の、なんていったっけ」 「瓦蕎麦ですね。了解です」 庭を弄るなら、手伝おうかとか、手伝ってください、とか言えばいいのに。 あの逢瀬のせいでと気に病んで、晤郎が勝手にやってることだと思っている。 それで少しでも後悔の気が晴れるなら、好きにすればいいんだ。 座布団を縁側に三つ並べて、ひざ掛けをお腹にかけて寝転ぶ。 縁側に私の影が流れていくのが面白い。読みかけの本は、栞を挟まず、そのページを開いたまま表紙がみえるようにひっくり返す。 飲みかけのお茶は、手が届かないところへ押しやって、手が寂しいので肘置きのつもりで猫のぬいぐるみを抱き眠る。 この、誰にも見られないのを良いことに惰性中の惰性と言わんばかりの格好で寝るのが心地よい。 「やっべ。超かわいい。写メって待ち受けにしよう」 ……シャッター音とともに、私の安息が邪魔される前までは、の話だが。

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