41 / 169

三日通うから 十

あんなに真っすぐ気持ちをぶつけられるのは、流石に24時間だときついのではないか。 これから毎日、あんな態度の彼と一緒に居ないといけないと思うと、ちょっと疲れるかな。 そんな私の心配は杞憂に終わった。 「もしもし、今送ったデータ、急いで確認して」 「あー、俺。そっちにさ、このクライアントからの依頼できそうな人、いない?」 「やべ。二時から会議、まじ会議!」 意外と仕事が忙しいらしく、お昼は一緒に食べようと出てくるが、他は自室に閉じこもって電話したり、キーボードを叩く音が響いている。 晤郎にも食費を払ってご飯を作ってもらっているらしく、たまに大きなおにぎりをもって部屋に戻ったりしている。 「彼は何の仕事をしてるって言ってましたっけ?」 「ネットの広告代理店だと聞いております。最近流行りの、ベンチャー企業ってやつですね」 「べんちゃー……」 私にはよくわかりませんが、仕事が順調そうなのは安心した。 そういえば旦那様も朝から出かけて夜までいないときもあったな。 スーツ着て、何人もの部下に指示を出しながら廊下を颯爽と歩いていた。 慕われていそうだし、人望もあった。 私には未だに旦那様の仕事が何かよくわかっていないけど。 けどおかげでのんびり晤郎とミステリー映画を見たりできる。 意外と私の方が犯人を当てたりするんだよね。 晤郎は裏の裏を読んで、読みすぎて、引っかかる。 「このおせんべいおいしいです」 「ああ、紫呉のおみやげです。何のげんこつって名前でしたっけ」 箱のパッケージを裏返して名前を確認するも、食べる手を止めない晤郎。 晤郎が好きだから、買ってきたのだろう。 「でもまあ、あまり同じ屋敷に居ても顔を合わせないなら、それはそれで気が楽――」 「あああ、だめ。楓に触りたい。楓の充電切れたっ」 「……前言撤回します」 せっかくのんびりできると思ったのに、居間に泣きそうな顔で入ってきた紫呉を見てげんなりする。 充電切れたって……触らせたことありましたっけ?

ともだちにシェアしよう!