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三日通うから 十一
背中合わせに寄りかかってくるので、嘆息する。
「重いです。おせんべいで殴りますよ」
「げんこつって名前のせんべいだから? 洒落?」
「……晤郎さん」
目で合図すると、代わりに殴ってくれた。
頭を押さえて文句を言うけれど、私のとなりにむりやり座ると『へへ』と嬉しそうに見つめてくる。
「超癒される。仕事頑張ろう」
「そうですか。ガンガン働きなさい」
肩に寄りかかてきて、なんというか、私が怒るか怒らないかのギリギリを攻めてきている。
悪いわけではないけど、どうしていいか分からない。
「そういえば、お土産の段ボール見つけたんだよね。いっぱいあるから部屋に取りに来てよ」
「部屋って、お仕事もされてる部屋でしょ。遠慮します」
「お願いー。あと、勉強で教えて欲しいこともあるし」
「晤郎に聞いてください」
私は今、ミステリー映画にハマっているので、他のことに時間を費やしたくない。
なんといっても、晤郎が10本も借りてきてくれたんだから。
「まあ、偶には楓さまも他人に興味を持つのは大事かと思います」
「ちょっと。後ろから撃たないで」
私に甘かったんじゃないのか。
それに紫呉の仕事なんて私には理解できない難しいものだし。
「そうと決まれば、来て。いいものもあるんだよー」
「ちょ、まって。晤郎さん、止めておいてください」
無理やり手を引っ張られると、彼は私を自室に引きずり込んだのだった。
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