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三日通うから 十四
「なんですか」
テーブルらしきものの上を薙ぎ払い、赤いブックカバーの小説を探して私の元へやってきた。
「これ、なんて読むの?」
「これは……」
覗き込んで、ぎょっとする。なんだこの本は。
「何?」
「魔羅です!」
「こっちは?」
「……分かりません」
「うそお、これだよ、これ」
顔の真正面に本を持ってくるので、つい手で振り払ってしまった。
本が畳の上に落ち、コードにひっかかりバウンドするとブックカバーが少し捲れた。
『白昼夢の未亡人』
その本のタイトルを見て、目眩がする。
紫呉は慌てて隠したけれど、私の目にはばっちり映っている。
わなわな震える身体は、怒っているのか呆れているのか、分からない。
「――最低ですね」
「や、官能小説ぐらい俺だって……怒った?」
「怒る、ですか。ああ、これが怒るってことですか」
よりによってそんなタイトルのモノを私に見せるから。だから怒ってしまっているのか、私は。
「食事以外では、当面会いたくないです」
「ごめ、ごめんってば。あ、お土産は?」
「いりません!」
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