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三日通うから 十六
ほら、安っぽい挑発に簡単に乗るあたりが紫呉らしい。
「ガキ扱いじゃないです。官能用語を言わせて喜ぶなんて、子どもでしょ。断定してます」
「楓よりちんこでけえし――って」
言い終わらないうちに、晤郎にリモコンで頭を叩かれていた。
これは流石に痛そう。
「下品。明日の朝食も抜きにしますよ」
「ふん。こっちはカップラーメン持参してるから平気だし。だって、楓、怒ると真っ赤になって可愛いんだもん、やーい、エロミボウジン」
「子供すぎる!」
リモコンを持ったままの晤郎に追いかけられ、捕まったのか縁側で正座で説教が始まっていた。流石に、今回は紫呉が子どもすぎるので、助けてあげない。
けど、こんな状況を小さな時はよく見た気がする。
夏休みの宿題を最終日まで隠していて、見つけた晤郎が紫呉を呼ぶ。
すると虫かごいっぱいに蝉を採って誇らしげな紫呉が、泥だらけで現れて――。
クスクスと自然と笑みがこぼれる。彼がわざとピエロになってくれたのは分かっているが、騙されて子ども扱いしてあげるのも――育ての親の務めである。
この数日警戒して、距離をやんわりととっていたのが彼にはバレていたのであろう、
油断も隙もない子だ。
仕方がないから、温情を出してやろう。
晤郎が買ってこない、カップラーメンとやらで手を打ってあげよう。
ただ――その先の展開だけは望んでも与えてあげられないよ。
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