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朧月夜と蒲公英 九

勝った。 無言になって、目を見開く彼が面白い。 不幸自慢ではないが、ここまで語って愛のないセックスを強要するような子供に見えなかったから。 煩いこの子を黙らせることができてよかった。 「なので、私からのお願いはただ一つです」 「……なんだよ」 「紫呉さんはとてもいい子なので、あまり、その乱暴な口調で喧嘩したり小突き合いしたりと、ハラハラさせないでください。不良……とういうものは、大人になったら卒業してください」 「だ、誰が不良か! ガキ扱いすんな! てめえ、今すぐ押し倒してやる。嫌がってもあんあん言わせてやる」 「楓さまー」 構いすぎて時間が経ってしまった。 晤郎が食事を運んで部屋にいないと確認すると縁側に探しに来てしまったのだ。 じゃあね、と手を振って急いで縁側に戻ってねたふりをする。 「またこんなところで。お食事ができましたよ」 「ああ、今日はすき焼きの残りでうどん?」 「うどんです。あと貴方の好きな、鳥皮の焼き鳥も焼きました」 やっぱり。絶対に好みのものを持ってくると思っていた。 晤郎も紫呉も、私に甘すぎるね。 ……紫呉は今夜、三日通いの誓いを実行しに来るのだろうか。

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