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朧月夜と蒲公英 十五
鼻息荒く言われて、ああ確かに若いなって思った。
ここで晤郎なら、足が冷えますねって気づいてくれるのに、彼は自分の考えを伝えたくて何も見えていない感じ。
今も昔も、紫呉がいると周りが華やかになるし、小さなことでぐちぐち悩むの馬鹿らしいなってぐらい元気になっていたけど。
「えーっと……今のこの状況は、紫呉さんの意見を押し付けられてるってことにならない?」
「なんでそんなときだけ頭が回るんだよ」
気づいていたのか。じゃあ尚更質が悪い。
「……じゃあ紫呉さんがしたいこと、押し付けにならない程度にしてみていいですよ」
「は?」
「目を閉じるので、どうぞ私が嫌がらない程度に、したいことをどうぞ」
目を閉じ、隣に座っていた紫呉の服を掴む。
先ほど強引に行くと言ったのは紫呉の方だ。
処理ならできるよ。でも私にはきっと彼を喜ばす方法が分からない。
目を閉じると、彼が息を飲むのを感じた。
緊張しているのが分かる。彼が羨ましい。
確かに羨ましいよ。私を好きだと、自由に発言できる。
でも私は叫べるほど何も持っていないと気づいた。
伏せた瞼に感じる、微かな息遣い。
ずっと待ってみても、何も起こらないので目を開けてみた。
薄目ではなく、はっきり上げてみた。
「なっ」
すると、耳まで真っ赤にしている紫呉が私と目が合った瞬間に、爆発しそうなほど顔をさらに赤めた。
「綺麗すぎて、触れていいか分かんなかっただけだし!」
「……綺麗、ねえ。口の吸い方は忘れてないのですか?」
紫呉の唇をなぞると、びくびくと大きく体を揺らした。
なぞった指先で自分の唇をなぞる。
「その唇で、此処を吸うだけですよ」
あまりに可愛い反応で、意地悪して見せた。
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