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朧月夜と蒲公英 二十一
――
少し考え込むように横を向く。
すると、まだ蒲公英の綿毛が舞っていた。
軽く、風に舞って自由に飛んでいる。
その姿が、私と対照的で重圧のない綿毛は、責任もなくただ好きなだけ舞っている。
誰よりも自由で、背中を押された。
「貞操観念が私には欠けているのかもしれません。幻滅するなら今ですよ」
「えー、俺が楓に幻滅? 世界が破滅してもないでーす」
「だ、だから押し上げないで」
唇をなぞりながら、自分の浅ましさに泣きたくなった。
愛かもわからない。恋でもない。彼の自由な部分に羨ましいと葛藤もあったはずなのに。
「き、キスが、嫌じゃなかった、です」
「まじ?」
流石に私の発言に驚いたのか、目を見開く紫呉。
観念した私は目を閉じて頷く。
口を吸うという可愛い表現から程遠いキスが、嫌ではなかった。
唇からの快楽が、私の心臓を早打ちさせる。
「じゃあもう一回したい」
私を抱きしめたまま器用に起き上がると、頬に口づけてきた。
荒い息、押し付けられた股間も胸も熱く、早く波打っていた。
私がしたいように動く、私がしたくないことはしない。
だから私に決めろ。――最後はいつもそうなのだ。
ずるい人だと睨みつつ、私は頷いて瞳を閉じた。
彼は包み込む等に顎を持ち上げると、親指で唇をなぞり、開かせる。
薄く開いた唇は抵抗せずに、その温もりを持つ。
入り込んできた舌に、私から舌を絡ませると彼が小さく息を飲むのが分かった。
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