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朧月夜と蒲公英 二十二
本の知識しかない私は、紫呉の動きを真似する。
彼が舌の根元をくちゅくちゅと刺激するので、真似して其処を刺激する。
すると溢れるように唾液が口の端から零れ落ちた。
学ぶことが多い。
彼が、私に。
教えて欲しいもは私の方か。
鳥かごの中の頭でっかちの、大きな蛙。大海どころか、青空を知らず。
「何を笑ってるんですか」
口を離した彼が、自分の愛撫は下手なのか不安になったのだろう。
見下ろす眼の優しい灯に心が温まる。
「いえ。もっと吸ってください。もっと。離れたら口が寂しくてじんじんします」
「――っ」
ちゅっと甘くすわれた後、彼の口が再び重なる。指先が、私の髪を耳にかける。
流れ落ちるように頬を撫で、首筋を指が撫で、肩の輪郭をなぞり、胸に置かれた。
弧を描くように胸を撫でまわされて、段々と固くなっていく部分を見つけ、服の上から摘ままれた。
「あっ」
「……直接触るよ」
帯の紐が解かれ、はらりと落ちた浴衣のあわせから、大きな手が入ってくる。
指先が尖った乳首に当った瞬間、全身に熱い痺れが広がった。
「――だ、だ」
ダメ――っと両手で彼の肩を押すのと、大きな足音が聞こえてくるのはほぼ同時だった。
乱暴な足音は、彼らしくない。
不安を煽るような、大きな足音。
「楓さま、どこにおられますか」
「わわーっ」
焦ってわたわたと帯の先を探る私に、紫呉は抱き上げたまま部屋の中へ移した。
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