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朧月夜と蒲公英 二十三
「時間稼ぐから、大丈夫」
「え、ちょっと」
飛び出した紫呉が、晤郎の方へ走っていく。
「何? 何かあったの?」
何かあったのは、私たちの方だろう、と思いつつも今は帯を直す方が先だった。
……何をしているんだろう。流されて、からかって。
今、私は何をしていただろうか。
思い返すと、ボンっと点火したようの頭が一気に熱くなった。
「うっわ、えろい。えろいっすね、姐さん」
「!?」
振り返ると、畳の上に縛られた絢斗さんが転がっている。
なんでここにこの人が?
「あー大丈夫。そとのぼんやりした灯りでしか見えてないから。それにしてもいい眺め。ちょっと電気つけてくれん? その太もも、もう少しはだけさせて拝ませて」
「い、嫌です」
近くにあったクマのぬいぐるみを押し付け、急いで帯を結んだ。
……見られていた。いや、見せてしまった。恥ずかしい。
紫呉になんてものを見せてしまったのだろうか。
いくら朧月夜といえ、同性の裸なんて見せて……。
「は、はしたなかったですよね」
「あ? 庭でイチャイチャしてたこと? あおかんしてたん?」
「あおかん?」
「あおかん。えーっと布団の上じゃなくて外で開放的にセックスすることー」
「し、してません! そんな、そこまではしてません!」
慌てて大声を出してしまい、晤郎に『そちらにいたのですか』とすぐに気づかれてしまった。
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