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花開く/花散る 三
どんなに楓が綺麗で、無垢で、汚れていなくても、この冷たい世界では全て無駄だった。
逆にそれが楓を守ってくれる防御服にはならない。
どれだけ傷ついても、彼は耐える術を学んでいる。いや、学ばないといけなかった。
一歩踏み出せば、一歩逃げ出せば、こんな埃臭く古臭い世界は封鎖的で流行らない馬鹿みたいな陳腐なものだと分かるのに。
もう少しだ。あともう少し。
もう少しでその世界を焼き尽くせる。
振り返ると、俺よりも冷たい目で晤郎が微笑んでいた。
三日目は、簾なんて全部薙ぎ払って風習も順序も全部ひっくり返して引き裂いて楓を奪って見せる。
硬くそう決意した。
決意をしたんだけど……。
朝、風呂に入ろうとしてその異変に気付いた。
脱衣所の丸い窓の格子の隙間から視線を感じて、其方に視線を移す。
すると、守ろうと決意したばかりの、俺の楓が覗いていたのだ。
「……えっと、楓?」
「……」
「一緒に入りたいの?」
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