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花開く/花散る 十
「来るのか。ふうん」
「昨日、ちょっと調べたんやけど、愚弟くん、雲仙寺経由じゃない海外の輸入品に投資して借金あるみたいやで」
「知ってるよ。ダイエット食品だろ。あれ、海外で死亡事故でたやつじゃん。輸入禁止になったし、投資したお金無駄になったやつだよね。愚弟くん、頭に脳みそ入ってるの?」
少し英語が分かれば、海外のサイト調べてみれば個人のブログやSNSで偽物か分かるのに。雲仙寺が関わっていないって時点で信用がないってことなのに。
本当に、あの家は顔が綺麗な馬鹿ばっかり。
それを知っているからこそ、楓は本を読んで知識だけはあるし、何かに手を出したりしない。
「投資ってなんぼぐらいやろうか。借金だって、良い値段で払ってやろうか。どうせもうあの家は自己破産やろ。姐さんが断れば」
「……楓まで届かなかったら、自己破産ってことか」
雲仙寺が呑み込むのは目に見えてわかっている。
田舎の方では楓の実家の士族としての信頼度はきっと高い。
だから手放しはしないだろうけど、両家の力関係が圧倒的に変わるのか。
「おい、紫呉。紫呉はいるか」
「やっべ晤郎だ。縛ったふりして」
カッターで切れかけていた縄を慌てて結んでいるとスーツ姿の晤郎が現われた。
いっつも甚平姿なのに、似合うのが腹立たしい。
「おい、お前どうせ暇だろう。楓さまの護衛につけ」
「護衛? なんで?」
「そこのチビは、一言もしゃべらないと約束するなら俺と来い」
「えー理由もなく行かれへんやーん。いややー」
絢斗が空気も読まずに駄々をこねると、晤郎はなぜか俺の方を睨んだ。
「弥生さまが来られた」
「弥生?」
「……楓さまの生みの親。何度訪れても楓様が顔を出さないこと、お金の工面に渋ることから弟君が連れ出したんだと思うが――」
「ママに泣きついたっちことか」
「楓は、母親と交流はあんの?」
「いえ。母親は複雑な出身のせいで意見をほぼ言える立場ではなかったっとお聞きしています。楓さまがお生まれになった瞬間、男だと知り泣き崩れ体調を崩していたとか」
「……子供を助けなかった親ってことか」
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