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花開く/花散る 二十一

「そう……ですか」 抱きかかえられて、もう降参するしかない。 今、今は一人で泣くのは苦しかった。 もう二度とこんな風に泣きたくなかった。 「あいつらが帰るまで、俺が抱きしめててあげる。もしまた現れたら、俺が楓を抱えて走るよ」 「……はい」 「俺は、家とか金とか、地位とか姉弟とか何もいらないし、何もないから。だからきっと、一番楓を傷つけない。けど一番楓と一緒に居たから、楓の心を一番分かってあげれるよ」 「はい」 「今、楓は俺にチューしてほしいよね」 「……驚くほど微塵も思っていません」 ポンポンと背中を叩かれて、私は首を傾げた。 一ミリも、今、そんな雰囲気になっていたとは思えない。 どうしてそう思ってしまったのか、逆に聞きたいぐらいだ。 「じゃあ、嫌なら嫌って言ってね」 「はい」 抱きかかえられていた身体を、畳の上にゆっくり降ろされると、覆いかぶさるように抱きしめられた。 人に強く抱きしめられると、重くて熱いのだと知る。 さきほどまで苦しくて悲しくて辛くて、ぐちゃぐちゃになっていたのに、その重さが全て包み込んでくれる。 「……これは、嫌じゃないですね」 嬉しいと、愛おしいと思ってしまうから、不思議だ。

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