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花開く/花散る 二十六

野菜ジュースを飲み干す前に、本当に晤郎は絢斗さんの車に乗って館から出て行ってしまった。 グラスの底に少し緑色のとろみが残って、傾けても落ちてこない。 上に持ち上げると、グラス越しに月が見えた。 今日は上弦の月だろうか。下弦の月だろうか。 今日は此処にきて何年目だろうか。私は私として何年生きてきただろうか。 「駄目だ……」 晤郎が変なことを言うから、思考がグルグルして酔ってしまいそう。 二人が居ないことを、紫呉は気づいているのだろうか。 とすると、いつ此処にやってくるのだろうか。 私は彼とどう向き合うのか。 私は、年若い彼にお荷物にならないだろうか。 分からない。何が正解で、何が間違いなのか私には分からない。 正しくない世界の中を、権力や金でねじ曲げて生きた世界で、どれが正しいかなんて私には分からなかった。 『三日通うから』 あんな自信満々に言っていた紫呉は、土下座しながら告白してきた。 私は、その自由さに打ちのめされて泣いた。 ずるかった。そう自由でいて欲しくて、外の学校に追いやったくせに。 私が、紫呉に自由になってほしくて、私が選ばせた道なのに。 『やっぱやめた』と、彼は三日通う宣言を止めて私を東屋まで浚って、そしてキスをした。 あの夜、月のない空の下で、蒲公英の身軽さと自分を比べて……。 「だめだ。私は、何を考えていいのか、何を今考えているのか、もう自分でも自分がよくわからない」 変に動揺して、自分でも何を言っているのか理解できていなかった。 ただ一つ、わかっていることは紫呉が私を抱きに来るということ。 そして私はそれを、受け入れたいのだけど、逃げ出したいということ。

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