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伸ばされた手に頬擦りして。三
服を脱がせながら、まだ口づけしかしていないのに彼は言う。それが可愛い。
「さあ。私、初めてなので」
「じゃあ、教えて。どうしたら気持ちいいか。全部教えて」
「紫呉」
「俺に愛を教えてくれたのは、楓だから。だから」
着物の脱がし方を覚え、太ももに手を這わせ下着を指に引っ掛け、脱がしていくことも慣れて。
手を伸ばすと彼は掴んで、頬に摺り寄せてくれた。
それだけでいい。私は、それだけで満たされる。君が注いでくれる全てのモノを受け止めたい。
「……楓?」
「伸ばされた手を、私は振り払われたことしかなかった」
『母様、母様……っ』
嫌だと叫んだ。男の身で、結婚なんて許してくださいと、私は両親に頭を畳みに押し付けて懇願した。
けれど、去っていく。
伸ばされた手に、二人は振り返らなかった。
『旦那様……』
私に土下座して、人生を奪ってすまないと謝る旦那様に縋ろうとした。
けれど、あの腕は、――晤郎だけのものだった。
「紫呉」
両手を差し出す。
すると両手を自分の頬に摺り寄せてくれた。
「俺は絶対に楓の手を離さないよ。だってずっと欲しかったんだから」
紫呉の手が、自分の唇を触らせる。
「この口は、楓を好きだとしか言いません。いや、愛してるも言うかな。楓専用」
腕をゆっくり降ろして胸に当てる。
「この胸は、楓を触ってすっげえドキドキしてる。破裂しちゃうかもしれねえ」
胸を触ると、祭りで聞こえてくる太鼓のように力強く響いていた。
こんなに早くて大丈夫かと不安になったが、自分の胸もそれぐらい大きく高鳴っていた。
「そんで、一番興奮してるのが、ここ」
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