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伸ばされた手に頬擦りして。十
Side:紫呉
楓が、『イチゴオバケ』と爆笑している。
いつも控えめに、口元だけで微笑むか、ふふっと綺麗に笑う楓が、涙を溜めて笑っていた。
笑っている内容はどうであれ、俺はそんな風にもっと自由に振舞ってほしかった。
今から壊さないように君を抱く。
その難しさと嬉しさに胸の高揚は止まらない。
誰にも触らせたことのない白くてシミ一つない足を弄り、さきほど達したのにもう顔を持ち上げている熱芯を握り、熱くて狭い中に指を入れる。
二本に増やした指を、中でピースするように広げると足の指先がきゅっと丸くなった。
じゅくじゅくに溶かされて、熱に溺れて、ぽやぽやした瞳が愛おしい。
誰よりも幸せになって。
誰よりも幸せにする。
誰よりも笑っていて。
絶対に泣かせたら許さない。
子どもみたいな願望を心の奥に隠して、指を絡めた手をシーツに押し付けた。
「し、ぐれ、さんっ」
大きく開いた足の中、俺を受け入れてくれた楓は、熱を孕んだ声で名を呼ぶ。
俺に押し付けられた手をジタバタさせていたので、首に抱き着くように誘導すると、唇を重ねてくれた。
杭を打ち込むように、狭くて熱い中を無理やりこじ開ける行為だった。
食いちぎられそうに狭いそこに、半分やっと打ち込んだ時、楓は痛みを我慢して唇を噛んでいた。
丁寧に解したけれど、痛みは伴う。
なのに、足を開いて痛みを堪えて迄、受け入れようとしてくれる。
その行為に愛を感じた。
恥ずかしい格好だし、全て暴け出させるし、欲望を一番抑えられない行為だ。
けれど、大切に思われているんだなってわかる。
だから人は、身体を求めてしまうのかもしれない。
一番相手の熱が感じられるこの行為が、男同士で受け入れるようになっていない場所だとしても、どうしても求めてしまうのかもしれない。
「紫呉さん?」
動かなくなった俺に、楓は首を傾げながら頬に手を伸ばしてくる。
その手を掴むと頬擦りした。
「ずっと、楓が欲しかったんだ」
暖かく、しっとり濡れた手にすりすりと頬擦りすると、涙が零れた。
それは楓も一緒だったようで、子どものように泣き出す。
「私もこの手を、ずっと掴んでほしかったんです」
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