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ぴろーとーく 二
横を向いて、胸の中に抱く。楓は大粒の涙を溜めて、睫毛をきらきら濡らしながら泣いていた。
「今まで一番不幸だとか、誰にも手を伸ばしたらいけないとか、恨むことはあっても、悪夢から覚める方法は分からなくて。でもこんなに単純だったんです。誰かに愛されるだけで、私の悪夢は覚めました」
「……恨めばいいし、許さなくていいことなんだってば」
「紫呉が私を分かってくれてるから、世界で一番幸せなのでいいです。もう、いいです」
俺を見上げて、口づけてくる。柔らかく、しっとり濡れて、たどたどしい。
「かーえーでー! 好きだ好きだ好きだ好きだ! もっとわがまま言ってよ! 好きだああああ」
「脈絡もなくなんですか。では」
ふふふとどこか嬉しそうな楓が両手で俺の頬を包み込んだ。
「ローションでべたべたで気持ち悪いし、イチゴの匂いもしますし、お風呂に入りたいです」
「おっし。抱きかかえてつれてく」
「あっちの棚に着替えが入ってるので」
「おっしゃ!」
「……一緒に入りますか?」
今日俺は死ぬのか。
そんな不安がよぎるほど、楓が甘くて幸せそうで可愛い。
今夜俺が死んだら、死因は楓だ。
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