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ぴろーとーく 七

ざっくばらんに、と言うのが正しいのかな。 美容師してる友達がお洒落なカットの練習とやらで、右だけ短く切ったせいでバラバラで後ろに縛ったり前髪結んだりして誤魔化してたんだけど、結構適当な長さになっていると思う。 自分ではあまり気にならないのだけど。 「楓は?」 「私はいつも晤郎に切ってもらってます」 「だよなあ。俺も楓が切ってよ」 「無理ですよー」 シャワーで泡を流した紫呉が笑いながら、爪先を湯船に浸ける。 指先が作った波紋が綺麗で思わず見とれてしまった。 「お侍さんみたいに結ぶのかなって思ったんです」 「うーん。楓は短い髪の俺とお侍さんの俺どっちが好き?」 すかさず肩を引き寄せると、無抵抗で流されるまま俺の足と足の間にすっぽりと納まった。 項が、噛みつきたいぐらい色っぽい。 「……紫呉さんならどっちでも好きです、けど」 俺の肩に体重をかけて見上げてきた。 「腰まで髪を伸ばしたら、押し倒されたときに髪が体に落ちてくるのかなって思いました」 「え、そーゆうのしたい?」 「……興味はあります。でも今はこのままでいいですよ」 ちゃぷんっと湯船が揺れる。 見上げてきた楓が、おずおずと自分からきすをしてきた。 「今は、――このままでいいんです」 指先で俺の髪をもてあそぶ楓は、濡れた瞳で俺を見上げる。 屋敷に閉じ込められていた楓は、今度は俺を君の中に閉じ込めようというのか。 肩に手を置いて、俺もキスにこたえる。 急激な変化はいらないと楓は静かに言った。

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