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No. 3 泡影

西の空にまだ少しの茜色を残したこの時間は深い海に潜っていくよう。こぽりと溢れた息が雑音を包みこみ泡のように登ってゆく。取り戻そうと伸ばした手の上でその気泡は月へと姿を変えた。「お待たせ」と軽く息を切らし近付く貴方の笑顔を曇らせないよう、手のひらの月をひっそりと握り潰した。

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