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柚さんは最近忙しい。 週5の大学生活、一人暮らしに不可欠な家事、バイト。付け加えて週末は俺の相手。 完全な休みなんて無いに等しい。本当なら俺が気を遣って来るのを控えたらいいんだろうけど、「もうすぐ金曜だね。夜、待ってるからね」なんてメッセージが届くと控えられなくなる。俺だって毎週の楽しみなんだ。 だから今日もこうして家に転がり込んで、大学終わりにバイトをしている柚さんの帰りを洗濯物を畳みながら待っているわけなんだけど。 「柚さん…倒れたりしないよな」 女の子みたいに可愛くて、あんな華奢な体でこんな時間まで働いて…時刻はもうすぐ22時を迎える。大学の近くのカフェで働いてるからここに帰って来るのはもう少し先だ。 俺に何かできることはないかと、とりあえず干してあった洗濯物を取り込んでテレビを見ながら畳んでいるが子供のお手伝い程度の力にしかなれてない。 料理でもできたらいいんだろうけどこれまた得意とは言い難く、一般的な家庭で一般的に育ってきたから料理は母親が作るばかりで俺はキッチンに立ったことすらない。 それでも以前柚さんがご飯を作ってくれている時に、何か手伝いますと言って野菜を切るように言われたことがある。 しかし、どうやら俺の包丁を持つ手があまりにも危なっかしく見てる柚さんの方が怖かったようで、あれ以来キッチンに立つ事を禁止されている。 『合鍵渡しとくけど、純希くんは僕が帰って来るまでテレビ見とくか寝とくか勉強しとくこと。間違っても料理作ってあげようとか洗濯物をまわしてあげようとか考えなくていいからね』 とまあここまで言われてしまったので俺には洗濯物を畳むくらいしか道がないのだ。これくらいなら許してくれるよな。今日のは俺がここで着てる部屋着も混じっていたし。

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