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「あ」 不意に聞き覚えのある音楽が聞こえて、テレビに意識を向けると人気のアクセサリーブランドの煌びやかなCMが流れ始めたところだった。 ここのメンズもあってシンプルで格好いいんだよな。新作の宣伝のようだが、高校生の俺には高くて買えたもんじゃない。でもこういうの贈ったら柚さん喜んでくれるんだろうか…柚さんだったらネックレスとか…? 『うわあ!純希くん!これ欲しかったんだ!いいの?』 「もちろんです、柚さんに似合うと思って」 『ありがと〜!大好き純希くんっ。何かお礼できないかな?』 「そんなお礼だなんて…」 『僕がしてあげたいんだ!何かない?なんでも言って?』 「……じ、じゃあたまには俺が挿れる側になりたいかなあ、なんて」 『そんなことでいいの!?もちろんいいよ!』 なんて?なんて?そんなことあったりして? 邪な妄想に占領されてしまったが、ただ純粋に大好きな柚さんの為に何かしてあげたい。 CMのようなアクセサリーを買えるかどうかは怪しいが、せめてささやかなプレゼントはどうだろう。いつもありがとう的な。…うん、プレゼントいいな。ただ前やってたバイト辞めたばっかなんだよな。 バイト、また始めよっかな。 ◇ ◇ ◇ 「なんで?」 「な、なんで…?」 「高校生バイトなんて土日入れるの期待されてるんだよ?純希くん僕と会う時間、減ってもいいんだ」 「そんなわけないです!でもっ」 「でも、なに」 「う……」 帰ってきた柚さんと晩御飯を共にしながらバイトをすることにしたを伝えれば、何故か手厳しく追及されてタジタジと狼狽える俺の図が、そこにはあった。 靴を脱いだ柚さんに、おかえりなさい!とハグをして、ただいまと優しくキスを返される。つい数十分前にそんな甘々な時間があったとは思えないほど柚さんの機嫌が悪い。 基本的には優しく穏やかな柚さんだけど、付き合って行くなかで結構感情の起伏があるのに気付いた。露骨に表には出してこないけれど、「あ…今ちょっと機嫌悪いかも…」なんてことはなんとなく分かってしまう。 そして今は珍しいことに、分かりやすく不機嫌だ。

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