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卒業 01

「柚さん…卒業おめでとうございます」 「ありがとう、純希くん。…もう、そんな泣きそうな顔しないで。二度と会えなくなるわけじゃないんだし」 春の気候の中、まだ少しだけ肌寒さを感じる3月。 俺の大好きな恋人である柚さんが卒業した。 ー ー ー 「それは、そうですけど…前よりは会えなくなるじゃないですか」 卒業式がすべて終わったあと、いつものベンチに座りながらそんな会話をした。 柚さんは俺を安心させてくれるみたいに会えなくなるわけじゃないと言ってくれたけど、同じ校舎に居ないということはそれだれけ柚さんと居られる時間が減るってことで…。 廊下を歩いても柚さんを見つけることができないし、駆け寄ることももう無いーーー想像するだけで息がしにくくなる程に胸が苦しかった。 俺の知らない場所に行ってしまう柚さんを、俺の目の届かないところで狙ってくるやつだって多いと思う。男はもちろん嫌だし女も嫌だ。柚さんはこんなに可愛らしい見た目だけど、俺のことをまるで女の子のように優しく丁寧に扱ってくれる。それを本物の女の子が体験しちゃったら、いくら自分より可愛い柚さんにだって惚れちゃうよな。 柚さんの前では少しでも格好良く居たいと思うのに、情け無くも泣きそうになっていると横から優しく抱き締められた。 「大丈夫。会う時間が減ったからって純希くんへの気持ちは変わらないよ。それに県内の大学なの忘れてるでしょ?僕一人暮らしするから泊まりにおいで」 「泊まり…?いいんですか?」 「もちろん。金曜日の夜に泊まりに来て土日もそのままうちにいるのはどう?まあ純希くんのご両親が許してくれるなら、だけどね」 「許してくれるに決まってます!柚さん家に泊まりとか…楽しみ過ぎる!」 嬉しさのあまりギュッと抱き締め返すと、ポンポンと背中を叩かれる。 あ~っもうホント大好き!この人の恋人は俺なんです!と周りに大きな声で叫んでしまいたい。興奮してテンションが上がった俺は数週間前から頼みたいと思って悩んでいた事をこのテンションのまま思い切って伝えてみることにした。 「柚さん!お願いがあるんですけど!」 「なーに?」 抱き締めていた体から少しだけ距離を開け、柚さんの着ていたジャケットを触る。しかしいざ言おうとすると、これを言って引かれたら…なんて思ってしまいなかなか口に出せない。 「あ、もしかしてボタン欲しいの?こういうのって第2ボタンだっけ?」 俺が何を言おうとしてるのかを察したように顔を綻ばす柚さん。その顔も可愛くてたまら無いし今すぐキスしてしまいたい衝動に駆られるが、柚さんの言葉は俺が言いたかったこととは少しずれていた。 「あの、ボタン…というか…その…」 「…いいよ?なんでもあげる。言ってみて」 ジャケットに触れていた手が恥ずかしさに下へ降りていき離れる寸前にそっと裾を掴んだ。 「この、ジャケット。柚さんがずっと着てた、コレが欲しい……です」

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