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第12話
恭一郎は圭の下半身に巻かれたバスタオルをそっと外した。
なるほど、体液を吸い取って少し湿っているようだ。
だがこれがΩのヒートなのかと目を見開くことはなかった。
毎回こんな風に体液を洩らしながら、圭は一人でヒートに耐えていたのかと思うと、やるせない気持ちが押し寄せてくる。
俺は圭が好きなのか──?
数瞬だけ、恭一郎はそう自分に問いかけた。
聖に「好きなのか」と訊かれた時は、圭に対して恋愛感情などないと言い切ってしまったが、それは本心なのだろうか。
むしろいくらΩのフェロモンにあてられたからと言って、「抱く」という選択をした時点で、恭一郎は圭に対して好意を抱いているのではないだろうか。
「っ、こっちも張り出してきた……」
圭の身体のあちこちを吸いながら、ジーンズの中で大きくなった一物を楽にしようと、恭一郎もまた下半身の衣服を下着ごとベッドの下へ脱ぎ捨てた。
そして生まれたままの恰好で、下半身から蜜を垂れ流す圭をしっかりと抱き締める。
一方で、手は圭の後孔付近をなぞっている。
溢れ出る愛液にみるみるうちに手が濡らされていくが、そんなことは構わない。
「き、恭一郎……、指……挿れて……かき混ぜて……」
「痛くないのか?」
「自分でする時……後ろも弄ってるから……」
圭としても、これまで眠剤だけでヒートを受け流してきた訳ではない。
苦しい時は自分で自分の性器を弄り、達することもあった。
それを素直に暴露すれば、恭一郎は圭の手を取って自分の一物に触れさせてくれた。
「おっきい……」
「お前のせいだ。責任はとってもらうぞ」
後孔の内側に指を挿し入れると、グチュ──、という卑猥な音が耳朶を打つ。
内側に溜まった愛液が容赦なく指に纏わり付いてくる。
ペニスを挿れたら、どんな快楽を与えてくれるのだろうと思うと、いつも冷静な恭一郎であっても、実戦してみたくてたまらなくなった。
「圭、もう挿れていいか?」
「え?」
今「圭」と呼ばれただろうか。
どういうことかと恭一郎の顔を見るが、今はそのことを問う場面ではないと感じた。
だから小さく頷いて、早く挿れてくれと両脚を大きく開く。
「な、恭一郎?」
「何だ?」
「お前も……実は初めてだったりすんのか?」
「経験があるように見えるのか?」
もちろん、そう見えるから訊いているのだと返せば、相手は苦い笑みを浮かべた。
「生憎、未経験だ」
ズン──、と太くて硬い肉棒が圭の後孔内の膣を穿つ。
「あぁッ……!」
自慰では得られることのない太い肉棒の感触が、圭の性欲を益々駆り立てる。
「あ、んぅッ……スゴ……」
「痛くないか?」
恭一郎が腰を沈める度に、知らない快感が背筋を伝って脳へと叩き込まれていく。
彼の肉棒の周りに、肉襞が吸い付いて締め付けているのが、圭にもよく分かる。
「少し力を抜け……これじゃ挿らない」
「む、無理……っ、恭一郎……もっと、奥まで……んぁッ……」
今日、圭はΩとして開華した。
今まではひな鳥だったのに、もう成鳥になってαやβを誘うようになった。
だが成鳥になって1日目で、心から好きな人に抱いてもらえるのは嬉しい。
疼く身体の中心に肉棒という名の杭を打ち込んでもらえるなんて、思ってもみなかった。
「まったく……なら力ずくで挿れる……」
上手く挿入できないのは当然だ。
圭は初めてなのだから、膣口を十分に開けないのだろう。
「あぁぁっ!?」
根元まで挿入し終えたその瞬間、圭の身体がベッドの上でビクンと跳ねた。
よくよく目を凝らせば、彼のペニスから白濁が流れている。
きっと最奥まで突かれたことで、達してしまったのだろう。
なんて淫靡な光景なのだろう、なんて気持ちがいいのだろう。
恭一郎も狂いに狂わされているが、圭の乱れ具合の比ではない。
恭一郎を受け入れた後孔から流れ出る愛液、ペニスから迸る精液、そして結合部。
視界を犯されているような錯覚に陥りそうだ。
「あ、あ……もっとして……恭一郎……」
「──っ!?」
よくやく分かった。
Ωにブロックワードがあることも、番を得なければ明るい未来など待ち受けていないことも。
性欲のままに誘い、乱れる彼を見ていれば、何もかもが理解できる。
恭一郎はそんな思考に蓋をして、再び腰を前後に振り始めた。
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