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 後ろから回された手が、シャツの裾を持ち上げて脇腹を撫でる。さわさわと肌がざわめく。  まろびながらどうにか玄関口を脱し、開けた部屋に入る。下着に引っ掛かったままの性器が圧迫感に脈打つ。壁に張られた鏡に、情けない前屈姿勢の一史と、覆い被さる晴人が写る。その赤い舌が執拗に領を撫でる。  他の部屋に比べて格段に大きなキングサイズベッド。ガラス張りのシャワーブース。ここから何を見るのか判らない屋内露天。  そんな一頻りのものに一切の興味も示さずに、晴人は一史の下着から性器を露出させようとする。  「ン、んんっ、」  ウエストに引っ掛かって中々出てこないのはわざとなのか、それとも不器用なだけなのか、小さな歩幅で足を進めると、その腰を引き寄せられて上体が立った。部屋の壁に設置された鏡がさまざまな角度からそのさまを写す。鏡に痴態が映る。  「ン、んんーーー……」  勃起した性器が頭を押さえつけられて苦しい。引き寄せられた体が身悶えてくねる。なにも考えられなくなってくる。括れを押さえつけていたウエストゴムがずらされて先端を撫で付けるように押さえる。  ―――もう少し、もう少し、  噛み締めた唇の代わりに鼻から短い息が漏れる。膝が震える。小用を堪えるように膝頭が寄る。  「んっ、あぁ……」  胴振るいのようにぶるんと揺れたのを鏡に見た。言い得も知れない解放感と羞恥心が合間って変な多幸感が胸を占めた。足が震える。露出されたそれは、晴人の手に触れられるのを待っている。  触られたい。触って。  水中から水面を見上げるときのあのキラキラした波模様が目の前に浮かんだ気がした。  ーーーああ、ダメ。  誰にそう言えばいいのか判らない。  「あぁ、ダメ……ダメ、です」  掠れた声が上がった。晴人は訝しげにしながら鏡の中、一史を見た。  「ナカ、洗わないと。」  視線でシャワーブースを示すと、晴人が唾を飲み込んだのがわかった。

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