81 / 91
4
想像するだけで勃起する。ぐぼ、ぐぼと空気を含んだ音が手元で聞こえる。右足を限界まで押し上げられた一史は息を詰まらせている。腰がかくかくと上下する。右手で乳首を探す。未だなぶられていなかったはずの左乳首も確かに芯を持って指先に触れる。
「ひあ、んぐ、」
摘まむと、内壁が締まる。奥の方からと、括約筋からと両方から波打つような締め付けを指で感じる。呼吸に開いた唇が艶やかでまた貪っていた。酸欠に眩暈がする。指を増やすと肉環がさらに張り詰めて、眉間が苦しげに歪むから、3本の指をバラバラに動かし、揃えたり、捻ったりしながらピストンさせる。
「んふ、ン、んぐぅ……」
胸を押し返す両手は纏められたまま力を失い、震えるにとどまる。対して指で容赦なく突かれる下肢は左足1本であられもなく上下する。抵抗ではない。ピストンにあわせて自分の最奥 に擦り付けようとしている。
「ン、ふっ!んんっ!」
「……なんだ?」
喘ぎに吐息ではない言葉を聞いて渋々唇を放す。絡んでいた舌がピリピリする。意識せずに擦り当ててしまった歯の堅牢さ故だろう。
乳首を弄りながら間近で顔を見つめる。これ以上ない程に染まっていたと思われた頬の朱が、更に鮮やかになる。照明の明るさにそれは明瞭で、顔だけでない、全てが今、さらの明かりの下に曝されていると思うと、近景だけでなく、すべてを丹念に注視したい思いに駆られる。
視線を胸に落とせば晴人の親指と中指に挟まれ、潰され、人差し指で先端を意地悪く引っ掛かれ、捏ねられている乳頭がある。その更に下には大量の潮を噴いてなお、完全に起立し、晴人のシャツにカウパーを擦り付ける性器と指を咥えて物欲しげに開閉する肉が照らされているのだ。
それを直視し、網膜に焼き付けたい衝動がある。
視覚的興奮に弱い瞳が、引き寄せられて自分の手元へ移動する。
「うぐっ」
瞬時拘束したままの一史の両手が、下から顎を押し上げ、視界を阻んだ。
「明かり、消してください。」
「……何?」
「さっき、そう言ったんです。」
上目に見上げる目に、それは違うだろと訝しむ。音の長さも、舌の動きも絶対に違っていた。
「嫌だ。」
はっきりと断って再び、その手を右手で押さえつける。
両手で嬲られ、成す術なく快楽に溺れる様が見られないのは惜しいが肩から足を下ろしてやるとぐちゃぐちゃに濡れた陰部が見やすくなった。
下腹部にまで反り返った性器は真っ赤な口を開閉させながらひっきりなしに透明な体液を吐き出して、時折、ぐぐっ。ぐぐっ。と背伸びした。
「違うだろ」
「ひあ、」
舌の平を唾液で潤し、左に比べて肥大した右乳頭を潰す。唇ではさんで舌をちらつかせながら喋ると、秘部に突き立てた指の腹辺りでしこっていたものが、下へ降りてきているのが判った。指で挟み押し潰してやる度に一史は切なげに鳴く。充分に緩んだ肉環の中で、ぐるりと一周円を描いて、そろそろと抜き出す。
「あ、あ、や、」
「いや?抜いて欲しくない?」
「ちが、」
言葉の割に内壁は奥から指を追うようにうねる。ねだる動きに下腹部がカッと熱帯びてずきずきと痛む。
「指でイカせまくるのもいいけど、」
「ひあっ!」
しどけなくなったアナルの淵に指を引っ掻け、意地悪く音を立てて引き抜く。足を開いたままひくひくと震える腰を引き寄せ、精液と腸液まみれの手で、自分の一物に手をかける。
「そろそろ挿入させて。もう充分解れただろ」
舌で乳首を押し潰したまま囁くと、掠れる吐息に一史の肌がざわめいた。埋めるものを失った肉が晴人の性器を宛がわれて吸い付く。ちゅく、ちゅくと自ら口付け、誘う肉の呼吸を一史は自分の意思で止めることができない。
「いい、だろ。」
喉になにかが絡んでいた。うまく喋れない。腰を進めると晴人の性器を咥えるほどの緩みを有していなかった筈の肉環が先端を受け入れる。内部へ誘うようにゆったりとうねる。
「でも、準備、がっ」
拒絶の理由が内的なものから外的なものへ変わる。
「ちゃんと始末してやる」
「でも、」
「ごちゃごちゃうるさい」
不安から拒絶されるより、解決しやすい。
「無理矢理にした日からお前に離れられたら生きていられないと自覚したのは俺の方なんだ。」
楔に触れた肉が戦慄く。戦慄きながら、俺を受け入れる。
「お前には酷かもしれないが、俺はお前に依存されたい。凭れ掛かられたい。」
「ひぅっ」
ガリと音を立てて乳首を噛む。腰が跳ねた拍子に含ませただけの性器が離れる。
ともだちにシェアしよう!