83 / 91
6
下唇が丸め込まれて皺がよる。眉が潜められて苦しげになる。たっぷり濡れた睫毛が伏せされて一度瞬く。
水をしっかりと含んだ瞳が開かれ、唇が解ける。
「はなさ、ないで」
たどたどしく、唇は言葉を作る。作って、口を閉じる。閉ざされた唇は堪らなくなったように再び、開く。
「離さないでください。」
溢れるようにこぼされた切実な願い。両掌が、俺の頬を包んで視線を合わせる。
「ああ。」
掠れた艶っぽい声に恍惚する。この声が俺を求めるなら幾らだって与えてやろう。幾らでも縛り付けてやろう。
許しを得た思いでその腰を掻き抱き、更に奥へ楔を打ち込む。腹の下で一史のものが、脈打った。
「ひっア!」
背を反らした一史の目が見開かれている。焦点があっていない。晴人を締め付ける肉が急激にキツくなり、気をやりそうになって腹に力を込めた。全部突っ込んでないのに、イきそうになった。
「あ、はる、さん、はると、さん」
息を整えながら体を離すと一史は不安げに何度も俺を呼ぶ。それが愛おしくて愛おしくて、その頭を撫でた。
汗と体液と精液に汚れたシャツを脱ぐと一史は息を飲んで、纏められたままの両腕が俺を求めるから、その輪の中に頭を突っ込む。その小範囲は身動きが取りにくく、どちらが捕らわれているのか判らなくなる。
「あ。」
「なんだ。」
「いえ、」
何でもありませんと呟いて、俺の胸に額を擦り付けた。そのまま、動きが止まる。一史の額が触れたところから、汗に湿った肌の心地よい吸い付きと、自分の鼓動を感じる。
「うぁあっ」
自分の心音の高鳴りに意識が移ってしまい、気恥ずかしさが込み上げて、そのまま、一史の体を抱え身を起こす。対面座位になった体を不格好な足で支え、一史が俺を見下ろす。
「離さねぇよ。」
「ンっ」
目の前の乳首が腫れている。俺が弄りすぎたせいだ。吐息がかかって、一史は身をくねらせる。腰を掴んで俺の上に下ろそうとする。
「これ、これっ!奥までキ過ぎるから、」
「奥まで侵されろよ」
前歯に引っ掻け、舌で転がす。一史の腰が揺れる。
「欲しい、だろ?」
口に含んだ乳首を摘まんで引っ張る。膝が震えている。吐精した性器はまだ根本が少し持ち上がる程度。
「アアっ」
返事を待たずに突き上げるとしなやかな背中が仰け反った。
ともだちにシェアしよう!