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丘川と月曜日の朝 02
「ほんと、すまん。…今日、夜空いてるか?」
「ちょっと遅くてもいいなら空いてるけど」
「丘川の好きなとこ行こうぜ。奢るから」
「くうぅ…そうやって何でも金にものを言わせて丘川ちゃんの機嫌が直るとでも」
「そういえば、この前とは違う店なんだけど、スタッフがみんな可愛いって有名な店があるんだよ。酒も美味いらしくて最近話題で…」
「よし行こう!そこ行こう!速攻で仕事終わらせまぁす」
「………」
スタッフが可愛い、の一言でコロッと手のひらを返す丘川に呆れたような顔を向けた柴はクルリ、と椅子をデスクの方へと戻してしまった。もう話は終わり、ということだろう。
まあそろそろ始業時間だし戻るか、と丘川自身も踵を返そうとした時、ふと見えたものがあった。
柴の薄っすらと水色のラインの入ったシャツの隙間から覗く首筋の、見えるか見えないか微妙なラインの場所に見覚えのある赤い跡。
あまり自分が付けられることは少ないが、付けることなら良くあるものだ。
「…あれぇ~?柴くぅん。昨日は彼女とお盛んだったんですかぁ?」
「!!」
まるで学生ノリのような物言いで冷やかすと、柴は心当たりがあるのかバッと首筋を手で抑えて、ゆっくりと顔だけで丘川を振り返る。
「……見えるか?」
「後ろに立つとちょっと見えますなあ。もうちょい襟立てたら何とかなりそうだけど」
丘川の言葉に柴はグイグイと襟を上に上げて、その秘密の跡を隠した。
後ろから見える耳が真っ赤だ。珍しい反応に丘川の中のなけなしのS心がむくむくと顔を持ち上げる。
「なになに結局仲直りしたの?浮気許しちゃったの?あんだけピーピー泣いてたのに、柴ちょっと優し過ぎじゃない?」
「う、うるさいな!あれは酒のせいで…まあ…確かに泣いたけど。…色々面倒かけて悪かった」
入社して数年の付き合いではあったが、丘川は柴の泣く姿をあの時初めて見た。丘川に関しては酒の度に仕事関係や女性関係で泣いているのだが、柴は滅多な事で泣くような男ではない。
柴は性格だけなら誰よりも男らしい人間なのだ。丘川はもし仮に自分が女であったなら、柴のような男と付き合いたいと思っている。柴とならきっと幸せになれるのではないかと密かに思っているほど。
男は見た目じゃない。中身と経済力だ。
それを柴は全て兼ね備えている。丘川としては悔しい部分もあるのだが成績トップの男としては認めざるを得ない。
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