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二
まぁ、あっさり大人の階段を上った後は、こんなものかと酒と雰囲気で抱いちまうことがるけど、なんか汗かくだけで、あまり気持ちいいとは思わないのは、俺が下手なせいか?
女が勝手に上で動くパターンばかりだからか。
そういや、そんな感じで関係持った奴って名前も顔も思い出せない。
そう考えると、眼鏡だけでも覚えていたこの高校生は珍しいかも。
「緑(みどり)と言います。このガソスタ使うなら、俺を指名して下さいね。飛んできますから」
「緑って女っぺー名前だな」
顔が女らしい俺は、高校生の名前に反応してしまう。
すると、表情豊かに、緑は顔をくしゃくしゃにして笑った。
「太陽の光を浴びなきゃ生きていけない、素敵な名前ですよね」
ふふふ、と笑う。
意味が分からねー。
「――変な奴」
「変でも良いです。こうしてまた話せるのも何かの縁なのだとしたら、俺はすごく嬉しいです」
始終ご機嫌な緑は気持ち悪かったが、ガソリンが満タンになったので俺はさっさとヘルメットを被ってドライブへ向かった。
――全部、嘘。
たまたま電車で見かけたと言ったのも、
此処でバイトしている理由も、
俺たちがまたこうして会話したのも。
――嘘。
そんな事、当時の俺は気づいていない。
妙に人懐っこい大型犬に懐かれたと、まんざらでもなかった。
「ん? あいつ何で俺の名前知ってんだ?」
俺、教えたっけ?
ダメだ。なにも思い出せないというか、あまり興味がないのかも。
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