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「どうした? 緑」 「名前呼ばれて嬉しいけど、その、太陽さんはその……込み入った話ですが聞いていいですか?」 「襲って来た女が俺の子を産んでた。――一人で育てるらしい」 簡単にかいつまんで話すと、緑はしかめっ面になった。 「そんな襲われた人の子を愛せるんですか?」 「可愛かったぞ。女の事は好きとか嫌いとかわかんねーけど、俺、あんま恋愛興味ねーし」 誘ってきたら断らないだけ。 「俺はいい加減な気持ちで父親になる事は反対します」 「何でお前が怖い顔してんだよ。俺は両親がいねーけど、そんな気持ちをアイツが味わうんだぞ? 大人の勝手な都合で。子どもは悪くねーのに」 「太陽さん……」 「まぁ19歳で父親って実感はわかねーけどなぁ」 「認知だけでは……戸籍に太陽さんの名前が載るだけで正式な子どもには認められません」 「へー。そうなのか」 「入籍する……必要があるかと思われます」 苦渋の選択のような、苦粒を噛み締めたような顔で言う。 何で緑がそんな顔をするんだ? 「まぁ、俺の独断じゃ決めれねーし電話してみるよ」 「……こんなはずじゃなかったのに」 「ん? 緑?」 「――ちょっと冷静でいられないので失礼します」 「おい、緑?」 眼鏡のフレームを上げながら、思いっきり電柱に頭をぶつけてよろめきフラフラしながら帰っていく。 『こんなはずじゃなかったのに』? なんだそれ。俺は馬鹿だからはっきり言ってくれないと意味が分からない。 真面目君には、俺の言葉は不誠実でいい加減に聞こえたのか? 「自分から近寄ってきてくせに」 イメージと違うと勝手に去られるのは慣れてるけどさ。 ちょっと、大きいわんこみたいで懐かれても嫌な気はしなかったのに。 ボロボロの単車を、店の裏の修理場まで持って行きながら、なぜだかスッキリしない気分だった。 ただ、追いかけれるほど俺は緑の事はまだ何も知らない。 だから、またどうせ来るんだからそれでいい。そう思っていた。

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