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七
通夜では、線香なんじゃあげさせて貰えず、散々酷い言葉で罵られ、門前払いだった。
別に、俺が騙したんじゃなく、騙されたんだからその言葉は胸を抉られなかった。
子供が死んで取り乱してんだから暴言もまぁ仕方ね―よな。
ただ、俺にそっくりな子供なんていらねーと顔も見たくないと叫んでいた。
そのくせ、馨の保険金やらは実子である椿が受けとることになるので、俺が管理しなくてはいけない。
保育士さんたちは、俺と馨が入籍間近だったと証言してくれたので、そこらへんはスムーズにはいったけど。
馨の両親は、――俺の母親である女が所属しているタレント事務所の社長だった。
なんの因果関係かしらないが、――嫌なめぐり合わせだ。
通夜には、あの女も来るかと思ったら、粘りたくもなく速攻で帰った。
顔が良い奴ばかりに囲まれていた馨。
俺の顔だけで子供を産んだのは、その環境のせいからだったのか。
死んじまったら話も聞けない。
ただ残されたのは、保育士さんたちが馨の両親から貰ってきたという、椿の衣類やらおもちゃやらと、可愛い椿。
そして、乾いた心の俺だけだった。
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