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「一人で太陽さんが頑張っているのに、俺、自分のことばかりでっ」 「?」 とりあえず、目の前がまだチカチカしていたが、緑ごと立ち上がる。 「別に、お前には今回のことは全く関係ないし。気にしなくてもいいだろ?」 それに一人じゃねぇ。天使のような怪獣、椿がいる。 「今は、――太陽さんからしたらそうかもしれませんが!」 「それよりお前、愛車を一週間も放置するとか信じられねーぞ。はやく見積もり書貰いに来い、馬鹿」 フラフラする足を悟られないように歩き出すが、すぐに腕を捕まえられた。 「今は、愛車より太陽さんが心配です。どうか、――今日は俺が送らせて下さい」 「は?」 「バイク、保育園の裏に停められるか聞いてみますから」 「ばっ 離せっ」 ひょいっとお姫様抱っこされると、近くに停まってあった車の中に優しく投げ入れられた。 なぜか、チャイルドシートまで用意されている。 お弁当と缶ミルク、お湯でつくる離乳食などいっぱい買い物袋に入っていた。 「椿君、連れて来ますね? 良い子で待っててくれなきゃ、家に着くまで縛りますから」 「脅してんじゃねーぞ、こら!」 確かに、今なら抵抗しても緑には敵わないかもしれないが、体調が万全なら負けねーのに。 ただ、怒鳴っただけで頭にガンガン響いてしまい、背もたれに倒れてしまった。 馨、すげーな。あいつ仕事もしながらこんな事、してたのかぁ。 もうちょい早く分かっていたら、何か手伝えたかもしれないのに、今はもう何処に馨が眠っているのかさえ俺には分からない。 ぼーっとしていたら、椿を大事そうに抱えて緑が保育園から出てきた。 「バイク、職員用の駐車場に置いていいらしいです。椿君、眠っているので様子見ていて下さいね」 チャイルドシートに椿を乗せると、緑は俺の上着から一瞬でカギを抜きやがった。 俺が右ポケットに仕舞っているのまでバレているのか。 俺のごつごつした男らしい愛車は、緑によく似合っていて面白くなかった。 「行きましょう。太陽さんの家までは流石に知らないのでナビお願いしますね」 「――お前、何で此処までしてくれるワケ?」 俺に恩義があるならまだしも、逆だしな。 俺が緑に助けて貰っている立場なんだから。

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