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二
「一人で太陽さんが頑張っているのに、俺、自分のことばかりでっ」
「?」
とりあえず、目の前がまだチカチカしていたが、緑ごと立ち上がる。
「別に、お前には今回のことは全く関係ないし。気にしなくてもいいだろ?」
それに一人じゃねぇ。天使のような怪獣、椿がいる。
「今は、――太陽さんからしたらそうかもしれませんが!」
「それよりお前、愛車を一週間も放置するとか信じられねーぞ。はやく見積もり書貰いに来い、馬鹿」
フラフラする足を悟られないように歩き出すが、すぐに腕を捕まえられた。
「今は、愛車より太陽さんが心配です。どうか、――今日は俺が送らせて下さい」
「は?」
「バイク、保育園の裏に停められるか聞いてみますから」
「ばっ 離せっ」
ひょいっとお姫様抱っこされると、近くに停まってあった車の中に優しく投げ入れられた。
なぜか、チャイルドシートまで用意されている。
お弁当と缶ミルク、お湯でつくる離乳食などいっぱい買い物袋に入っていた。
「椿君、連れて来ますね? 良い子で待っててくれなきゃ、家に着くまで縛りますから」
「脅してんじゃねーぞ、こら!」
確かに、今なら抵抗しても緑には敵わないかもしれないが、体調が万全なら負けねーのに。
ただ、怒鳴っただけで頭にガンガン響いてしまい、背もたれに倒れてしまった。
馨、すげーな。あいつ仕事もしながらこんな事、してたのかぁ。
もうちょい早く分かっていたら、何か手伝えたかもしれないのに、今はもう何処に馨が眠っているのかさえ俺には分からない。
ぼーっとしていたら、椿を大事そうに抱えて緑が保育園から出てきた。
「バイク、職員用の駐車場に置いていいらしいです。椿君、眠っているので様子見ていて下さいね」
チャイルドシートに椿を乗せると、緑は俺の上着から一瞬でカギを抜きやがった。
俺が右ポケットに仕舞っているのまでバレているのか。
俺のごつごつした男らしい愛車は、緑によく似合っていて面白くなかった。
「行きましょう。太陽さんの家までは流石に知らないのでナビお願いしますね」
「――お前、何で此処までしてくれるワケ?」
俺に恩義があるならまだしも、逆だしな。
俺が緑に助けて貰っている立場なんだから。
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