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十二

逃げる緑の舌を吸い上げたら、ひゅっと小さく息を飲む。辿々しいキスは、とてもじゃないが慣れてる奴がするキスではない。 少なくても一夜を共にしてきた女たちの方がまだ上手いし、上手に反応していた気がする。 「お前、ヘタだな」 「ニヤニヤ笑わないで下さい」 唇を離して息を整えている緑を見て自然と笑みが溢れる。 月明かりの下、耳まで真っ赤な緑が可愛くてつい笑ってしまう。 「まぁヘタでも俺で練習すれば良いんじゃね?」 「そんなの……毎日が本番です」 本番が毎日できるならもっと嬉しそうな顔をすれば良いのに。 ってか。 「毎日させるとは言ってねーよ」 たまらずに布団の上で笑い転げてしまう。なんつーか、可愛いや。緑は。 「笑わないで下さいよ。すぐに虜にさせるキスするんですからね」 「楽しみだな。それ」 笑いすぎた俺は、椿の横まで転がると天使のような寝顔にチュッとキスした。 「椿の方が可愛いけどなー」 「すぐに『お父さんとお風呂入りたくない』とか言い出しますよ」 「女子か」 だが気を付けねば、ベッタベタに甘やかしてしまいそう。女みたいに長いまつげも、ふんわりぷにぷにした頬も、小さな指も全て可愛い。 「俺も椿くんも、いつまでも可愛いだけの子供ではありませんからね」 ギシッ 再び畳の軋む音がしたと思うと緑の影に視界が暗くなる。 頭を引き寄せて、駆け引きしようと唇を開くが、緑には駆け引きは要らない。 ストレート直球勝負が好きみたいだ。 頭を引き寄せた手を、絡みとられるとそのまま布団に縫い付けられた。 甘くて擽ったくて、初々しくて。駆け引きも打算も必要ない、キス。 ――俺だけは。 結局緑が俺についた嘘は聞けないままだけど。 こんな馬鹿正直な奴が言えない嘘なんてきっと大したことないと思う。 杞憂だと思う。

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