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「お爺さん、ぎっくり腰なんですね」 椿を保育園に迎えに行ってくれた緑が、俺の仕事場に椿を連れて現れた。 結局あの水色の単車を部品を交換して渡したが、未だ一度も乗ったところは見ていない。 相変わらずのピカピカに磨かれた車で現れた。 「まあな。三階建の古い家でよ、年寄りにはそろそろキツイと思うんだよな。花屋なんかもう辞めて建て壊して平屋にすればいいのに」 車の下から這い出ると、真っ黒になった軍手を脱ぎながらため息が出る。 あのクソジジイは頑固だからな。俺が何を言おうと聞かない。 限界まで身体が壊れたら、誰が面倒を診ると思ってんだ。 椿とジジイを同時に世話するとか、無理だ。 「でも、心配ですね。俺も行っても良いですか?」 「え、ああ? 俺の家にか?」 あんなボロい家に来ても楽しくないぞ、と断ろうとした時だった。 「太陽くん、お茶入れたからその子たちと休憩しなさいよ」 店から親父さんの奥さんが顔を出して手招きしている。 手には、0歳ようのお菓子を持って。 奥さんになるべく椿を見せず、刺激を与えないようにしようとこっちの修理場に連れてきたんだが……。 ちらりと親父さんを見ると、気にしなくていいと豪快なガッツポーズをくれたのでお言葉に甘えてみることにした。 「まぁまぁまぁ、太陽君に似て綺麗な赤ちゃんねぇ。ほうら、ビスケットですよー。歯はあるんでちゅかね」 椿を膝の上に乗せた親父さんの奥さんは、ビスケットを手に蕩けるような顔とおまけに赤ちゃん言葉。 ワイルドな親父さんと同じく、前髪にパーマ、真っ赤な唇、気合の入った金髪はどうみても俺みたいにヤンチャしていた名残があるのに。 赤ちゃんにデレデレな辺りが、面白いぐらいシュールだ。 「大変ねぇ、太陽くん一人で赤ちゃんなんて。お友達も一つ年下なら尚更。私は産んだ経験ないけどさ、手伝ってやれることは何でもするから、頼ってきなよ?」 俺たちには姉貴肌全開で格好いいが、すぐに椿がビスケットに被りつくと、スマホを取り出して写メを撮りだした。

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