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十二
息を飲む緑が、震えていく。そんな緑の指に、自分の指を絡めて誘う。
「恋人として、抱いていいんですか? 俺は一夜だけの関係なんて嫌です」
こっちはさっきからムラムラしてるのに、こいつは馬鹿真っ直ぐで本当に、笑っちゃうぐらい嫌になるよ。
「馨や遼子さん見たら、まぁしばらく女は要らないかな。――千明みたいなやつには、相応しくないし」
「太陽さん」
「太陽で、いいよ。恋人なら、お前のほうがいい」
今すぐ、その温もりが欲しい。俺の為に駆けつけて抱き締めてくれた、あの温もりで、
今すぐめちゃくちゃに抱き締めて、今日の事、忘れさせて、
ずっとずっと離さないで、温もりを奪わないで。
呆然とする緑の手を引くと、そのまま後ろへ倒れる。
緑も手を引かれたまま、俺の上へ倒れてくる。
純粋で、キスも不器用な真面目な青年にイケナイ遊びを教えるみたいだった。
男に抱かれるなんて、想像もしていなかった。
こんな日が来るなんて、思いもしなかった。
服をめくり、顔を埋めて唇を這わせる緑は、どこぞの王子様化のように、丁寧で優しい愛撫をしてくる。
女みたいに可愛い声も、胸もない俺の身体のどこに緑が反応しているのか分からない。
ただ、肌に当たるサラサラな髪を撫でてやり、足を開いて緑の腕を掴むと、良い場所に誘導した。
足でジーンズの上からなぞると、もうはち切れんばかりに反応していて、つい噴き出してしまった。
「太陽さん、もっと集中して」
「くくくっ だから、呼び捨てで良いって」
首に両腕を絡めて、引き寄せると頬に唇を押し付ける。
そして、薄く唇を開いて舌を少し出し挑発する。
簡単に、誘われた緑は、眼鏡を外し、上着を脱いだ。
何だ、男らしくがっつけるんじゃねーかと、にんまり笑ってしまった。
椿が横で眠る中、起こさないように声も殺す。
優しい緑の手つきは、焦らされているようで、もはや拷問でしかなくて。
こっちが誘い、余裕がないぐらい追いつめてやる。
行為は、緑が執拗にほぐし焦らし、こっちが恥ずかしくなるぐらい丁寧にしてくれたが、初めて受け入れるのは、やはり痛かった。
「いってぇっ」
「――すいません。一度」
「逃げんな」
腰を引こうとしたので、足をクロスして腰を捕まえる。
が、その動きでさらに奥にぎちっと音を立てて侵入されて悲鳴を上げてしまいそうになる。
裂けてるんじゃねえのかってほど、熱くて痛くて、中心の感覚が良く分からない。
布団を噛んで押し殺すけど、声は抑えられない。
優しく髪をなでられ、キスされ、涙を吸われ痛いけど、――その痛みさえ、この不器用な緑らしくて可愛いと許せた。
愛しい、可愛い、――温もりが愛おしい。
キスだけじゃ満足できない。
優しい愛撫だけでは満たされない。
もっと奥まで来い。もっと奥まで貫いて、俺を満足させて、緑で満たせろ。
観念した緑が、理性を壊して噛みつくようなキスをしてきた時、ようやく落ちてきたのかと笑いが止まらなかった。
その真面目ぶった嘘の顔を、引きはがしてやる。
さっさと本性を曝け出して、乱れて余裕のない顔をしやがれ。
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