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なんで名前の読み方で嘘をつく必要があるのか? いや、緑は一度も馨の話を出していないだけで、嘘はついていない。 ただ黙ってただけで。 だと思いたかったが、緑は俺に嘘をついていると言っていた。 数々の当てはまる出来事が思い浮かんできて……肯定してくる。 「み、どりは……俺よりも以前からこの保育園には来てた?」 呆然とする俺に、千秋はびくびくしながら頷く。 「緑さんはよく馨さんの代わりに迎えに来てましたよ」 緑は……。 緑は……俺が椿の父親だと分かっていて近づいてきたんだ。 意図までは分からないが、きっとそうだ。 「あの、太陽さん?」 心配げに千秋が俺を見上げる。 ニカッと笑って千秋の方を叩き、怒ってない素振りを努めた。 「大丈夫。悪かったな。――椿の絵は緑のままでも大丈夫か? 描き直す必要がある?」 「いえ。太陽さんが気にならないなら」 「ん。じゃあそのままで良いよ。緑も子育て手伝ってくれてんだから、きっと喜んでくれるしさ」 誤魔化した。 けれど俺の中で確かに何かが崩れていく音がしたんだ。

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