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八言。真実の甘い、嘘。 Side:緑
これだけは伝えたかった。
……姉さんより先に、俺が貴方を好きになったんです。
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思わず振り向いてしまうほど綺麗な人だった。
姉さんと同じ高校の制服だったので、太陽がブレザーを着ている事に妙な違和感を感じた。
女性かと思ってた。
太陽は、柄の悪そうな男数人の中心で、屈託なく豪快
に笑っていた。
一目惚れ。
姉さんより俺が先に、太陽に惚れたんだ。
貴方がバイクの免許を撮ると教習所に通い出すと、学校から近かったので見に行ったりした。
真っ直ぐ前を向く貴方は俺なんて気づかなかったけれど。
『ねえねえ、私の高校に某女優の隠し子が居るんだって』
姉さんにそう言われるまで。
『すごく綺麗な人らしいわ。見に行ってみましょうよ』
『俺はいいよ』
『貴方が事務所を継ぐんだから貴方が見なきゃ駄目よ。はやくはやく』
促され渋々見に行った先に、太陽がいた。
そんな小さな繋がりが俺たちを狂わせたんだ。
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「俺は貴方を見て、俺が思いを寄せていた人が事務所の女優の隠し子だと後で知りました。一緒に見て、姉は貴方に惚れてしましました」
芸能事務所なんて親が運営しているために、美形ばかり好きになるが自分の容姿に自信が持てない姉は、せめて綺麗な顔の子供をつくり子供にだけは自分と同じ目に合わせたくないと言った。
それで、俺に貴方と近づく方法を考えて欲しいと言いだしたんだ。
まさか――。
まさか、姉弟で同じ人を好きになるなんて思わなかった。
『ねえ、緑はゲイでしょ?』
姉は鋭い観察力で俺の性癖を暴いて笑った。
『叶わない相手の子供を私が産むってどう? 貴方は義弟として傍にいられるわよね』
姉は真剣だった。真剣に俺に計画を持ちかけたんだ。
俺も、勝算はあったし打算もあった。
事務所の女優の隠し子だ。秘密を握っている俺たちの方が有利だと。
「俺があの日、お酒に睡眠薬を混ぜて飲ませるのを提案したんです」
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