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三
本当に太陽から、俺への愛情が無くなったように見えた。
何でもする。
貴方に俺の気持ちが受け入れられた時は、過去、貴方にしたことを何でもして、土下座してでも許して貰おうと思っていた。
だけど、太陽からははっきりと強い拒絶しか見えない。
拒絶して、俺なんてその瞳に映らないような冷たい顔。
「許してなんて虫が良過ぎるかもしれないけど、――俺はただ同性の俺が貴方に受け入れられるとは思わず、諦めていたんです。ならせめて一番傍に居たかった」
傍に。
「金輪際お前とは会わない。謝罪も愛してるだも聞きたくねぇ。消えてくれ。今すぐ俺の前から消えてくれ!」
叫ぶ太陽は立ち上がると俺を蹴飛ばし、ドアを閉めようとした。
だから、俺は太陽の両肩を強く掴むとそのまま中へ入った。
このままさよならなんてしたくないから。
「離せっ!」
暴れる太陽の顔を見下ろしながら、全てを悟った。
この綺麗な人は、もう俺を好きだと言わないだろう。
お日さまのように笑わないだろう。
俺を冷たい目で刺す貴方が、それでも好きなのは、その誰も寄せ詰めないような張りつめてがちがちな心に潜入したかったんだろうと思う。
この人の心に侵入するためには、どんな手でも使いたかった。
今も。
段ボールだらけの部屋の奥、初めて太陽と愛し合ったその部屋で、――俺は太陽を押し倒した。
鉄拳の2,3発を覚悟したけど太陽は全く抵抗しない。
しないどころか、お人形のように動かない。
服をめくっても、ジーンズに手をかけても、濁った眼で俺を見るままだった。
本当に、俺を愛してた?
ただ、傍にいる都合のいい奴だったのなら、それでもいい。
都合のいい男に喜んでなるから。
だから、俺を目にまた映してよ。
足を左右に開いても、唇を合わせても、太陽は声も洩らさなかった。
太陽の中での俺が、もういない。
だったら最後に、お人形みたいな太陽を優しく優しく抱かせてもらう。
甘い、甘い、キスをする。
それが嘘で塗り固めていても。
それが、俺と太陽の最後の夜だった。
最後の夜は、言葉も交わさない、視線さえ合わない、味気ない嘘の味がするキス。
心を満たさない、身体だけ繋げる行為。
それでも、俺は貴方が好きなんです。
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