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九言、雷也。
行為が終わった後、身体中に花弁を散らせたまま太陽は俺に馬乗りになった。
そして無言で俺を殴りつけると、どんどんヒートアップしていった。
椿の寝ぼけた声で我に返ったけど、拳が止まることはなかった。
「もうお前とは終わりだ。満足したろ」
散々殴りつけた後、中に出した俺のモノを処理もしないままジーンズを履きそのまま家から出て行った。
ぼーっとしている俺の頬を伝ったのは、涙だったか血だったか。
そのまま太陽は戻ることはないまま、引っ越し業者が入って来て荷物を全て持って行ってしまった。
何度か太陽の家に行ったり保育園に行ったが、会わせて貰えず。
『しばらくソッとしてあげてくれませんか?』
そう千秋先生に言われて、心が折れてしまった。
太陽は彼女にはきっと全て話してんだろう。
でも、太陽。
会えない時間が長くなると、――心が壊れて謝るタイミングを見失い、会いに行く勇気が出なくなるんだ。
俺は今でも、初めて会ったあの瞬間のまま君を愛している。
何を捨てても傍に居たかったんだ。
苦い、苦い、嘘を許してとは言わない。
許せるような、二度と馬鹿な嘘をつかない大人になって貴方に会いに行くからどうか、またその瞳に俺を映して欲しい。
結局太陽に居ない時間を狙い、何度も太陽の家を訪れて、御爺さんと話をするぐらいしかできなかった。
御爺さんも最初は話相手が欲しかったのか家に招き入れてくれたし、口は悪いけど太陽同様に暖かい良い人だった。
けれど、二か月もしないうちにあの三階建の家には明かりが消えて、いつ訪れても誰も居なくなってしまった。
保育園には行けない。椿君には、どんな顔をして会えばいいのか自分には分からなかったから。
椿君は可愛いし、姉さんと太陽の子供だし、愛情はあるんだけれど。
君を生み出したのが、俺が太陽に近づくためだったと思うと、愛情をそそぐ資格なんて無いんじゃないかと思ってしまうんだ。
どんな顔をして君に笑いかければいいんだろうか。
全部、俺がついた嘘のせいだ。
君が好きな俺の身勝手な嘘のせい。
そう、自分のエゴに酔いしれて会いに行けないでいると何ヶ月か更に経ち、事務所に封書が届いた。
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