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四
雷也は腕捲りすると肩を回しだした。
「やりたい事?」
「セクハラしてきた奴ら、男女問わずぶん殴ってくる。事務所がデカいからあいつら強いバックには何もできないからな」
フフンと鼻唄混じりで、スーツの真面目そうな男を見つけスキップしそうな勢いで近寄る。
んなの許すか。
全力で止めながら、少しでも太陽に重ねた事を後悔した。
これはかなりの暴れ馬だと思う。
事務所が――父が上手に手綱を持てない、いやつけさせても貰えない思う。
「何笑ってんだよ」
「いや。かき回してくれるのが今から楽しみです」
それぐらいが丁度良い。
親父たちが困る顔を想像したら笑ってしまう。
「暴力で解決じゃなくて、手出しできないぐらい上に上った方が楽しいですよ」
フッと俺が笑うと、雷也も笑う。
「真面目そうな顔して腹黒いな」
自覚している。
数年は……この雷也の育成に手間取り、太陽への気持ちを手放そうと頑張った。
俺は仕事へ逃げた。
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