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椿が大きくなり、あの日、俺が椿を受け取った19歳に差し掛かるまで年月は経った。 椿も俺と同じ可愛いモノ好きの甘いもの好きに成長したものの、なぜか180センチ近くの腹筋割れのイケメンになって、仕事に没頭して倒れてしまう前に俺に食事を用意してくれるまで成長した。 この前なんて、通っているボクシングジムで喧嘩して相手をボコボコにしてしまうほど(一回不意打ちで殴られてるが) 自慢の息子だ。 最近漸く色付いて、朝帰りに見知らぬシャンプーの香りを漂わせてくるが。 ばれたくないならシャワーだけでシャンプーやらボディソープは使わないんだぞ。 俺は夜遊びする時、お前に見つからないようにそうしてきた。 まぁ香水の香りで椿に鼻を摘ままればれてたようだが。 俺みたいに恋やら愛やら分からずに、仕事人間に生きるよりはマシだ。 俺より十分人間らしい。 「そう言えば、親父さぁ」 甘い紅茶を淹れながら、椿が言う。 「ん?」 「じいちゃんの墓参り、忘れてたろ。命日ぐらい覚えておかないと」 「あー……はいはい。適当に花でも見繕うか」 借金山盛りてんこ盛りのくそジジイなんて悲しむ間もなく挨拶もする暇なく借金返済に追われてたから多目に見てくれよ。 「俺の子育て、じいちゃんが手伝ってくれたんだろ」 「あ?」 「あの可愛かった保育園の先生が前に言ってた。椿くんは覚えてないだろうけど、お父さんは一人じゃないから頑張れたとかどうとか……」 「それ、いつの話? お前千秋の事覚えてんの?」 「ちあき? そんな名前だったけなー。うん。なんかふんわりと花みたいな先生」 こいつ。可愛いモノ好きなのはまぁ良いとして、だ。 千秋も忘れてるならあいつなんて影も形も思い出せないだろうな。 「まぁジジイは役には立たなかったがお前の面倒は少し見てたかもしれんな」 「やっぱな。俺、じいちゃんの眼鏡を見上げるの好きだった」 ……椿。ジジイは眼鏡してねぇよ。

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