75 / 206
三
椿、千秋のことまでもう過去の事になっているのか。
残酷な気もするけど、だが椿はベットの下にエロ本よろしく、某ミュージシャンのグッズを招集しているのを俺は知っている。
俺が椿はどんな女の子が趣味かちょっと覗いてみたくて、好奇心が勝ったんだが。
覗くとあの、忌々しいクソむかつく雷也というガキのグッズだらけだ。
椿の趣味は――最悪だ。
確かに顔は、椿が好きそうな綺麗系だが、あいつは性格も止めた方が良いと思うんだけど。
「何?」
「いーや。さぁて仕事仕事」
意外と椿は自分の事を何も分かってねーよなっとか言いそうになって止めた。
苦労して勉強して、経験積めばどんな人と付き合うのが楽か見えてくるだろうから。
次の日は店は休みで、店頭販売は大体椿の仕事で俺はネットで注文された花束やブーケを作る仕事ばかりだから、休みなんて殆どない。
なのに椿が勝手に1ヶ月に二、三日仕事を全く入れない日を作るから仕方なく趣味のバイクを再び始めた。
バイクはいじりだしたら、二、三日じゃ足りねーから中途半端な事はしたくないし。
て事は軽く走らせて終わるぐらいしかできない。
「遅ぇな」
いつものツーリングするコースで親父さんを待っていた。
何時まで経っても、現れないし電話も出ない。
珍しいけど、真面目な親父さんの事だから仕事か何かなんだと思う。
仕方ねぇから今日は飛ばして帰ってさっさと眠ってしまおう。
ハンドルを握り、二回吹かしてからアクセルを踏み込む。
風を切る感触、ビルが流れていく景観、誰も追いついてこれないスピードとテクニック。
酔いしれて、快感で、――癖になる。
そんなコースで、俺の前を走っているバイクを見つけた。
俺のバイクより良いメーカーで、だが断然素人の身のこなしのバイクを。
ともだちにシェアしよう!