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直ぐ様カーブで追い越して、ミラーでどんな奴かチラリと見てみた。 黒のライダースーツからはガタイの良さが見てとれた。だが形から入ったのであろう黒のライダースーツやら有名ブランドのバイクやら。 初心者臭くて物足りない。最近は親父さんと肩を並べて走る俺にとっては。 丘の上に到着し自販機でココアを買っていた時だった。 「きゃー! KENNかっこいいー!」 「あーん。ライダースーツ似合ってるー」 「喉渇いてない? スポーツドリンクあるよー」 黄色い歓声があがるそちらを見ると、女に囲まれているのはさっき俺が追い抜かしたバイクの野郎だった。 「ふー。お前らどっから俺の情報集めてくるんだ?」 「だってKENNがミュージックタイムでバイク買ったって言ってたもん」 「KENNのオフの日は把握済みですーぅ」 「怖ぇーな。女は」 バイクから降りたその男は、ヘルメットを外すと汗一つかいていないウェーブかかった前髪を左右に振る。 低い男らしい声からは自信が満ち溢れている。げーのーじんかなー? それぐらいの好奇心でバイクに寄りかかり、その男を見ていた。 一人で此処に来る時は、いつもならここら辺で、知らない女から話しかけられて適当にホテル入って――……、というパターンで遊んでいたが、今日はそこらの女たちもあのげーのーじんに視線がいっている。 今日はやはり早く帰って眠るべきなようだ。 営業スマイルを振り撒いていた男が、ふと視線を俺の方へ向ける。 「あ」 ――あ? 「あんたさっき、俺を追い抜かしたバイクの!」 バレたか。因縁つけられたら殴ってやる。 「あの身のこなし、女かと思ってたが――やべぇ。超美人じゃんか」 美人? 俺が女みたいだと馬鹿にしやがってるな。 飲み終わったココアの缶をライダースーツ目掛けて投げつけると、男は右手で慌ててキャッチしやがった。 「もう会わねーとは思うが、俺を美人とか言うんじゃねーよ」

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