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ちょっと女にキャーキャー言われると、頭がお花畑になる奴っているよな。 すっげー不快。さっさと帰ろうとヘルメットを被ると、げーのーじん野郎がファンを掻きわけて俺の元へやって来た。 「あんた、俺が誰か分からね―の?」 「??」 こいつ、何でこんな自信満々なんだろーか。 「世界中の人間がお前に興味あると思うなよ。ばーか」 「ひでー。世界中なんてどうでもいいが、――俺はあんたに興味あるぜ?」 とうとう至近距離に来られると、頭一個は身長差があった。 ウェーブ掛った前髪を垂らし、サングラスをかけた大男。 ちょっと外人の血でも流れてるのか、鼻も高いし堀が深い。 「お前、あんなに可愛いファンがいっぱいいるのに、俺を誘ってんの? てか、俺ゲイじゃねーよ」 遊ぶなら女が良いに決まってる。 「俺は、ファンの前じゃバイだけど、本当はアンタみたいな男が抱きたい生粋のゲイ」 あっけらかんと自分の性癖をばらすこの男に少しも嫌な感じがしないから不思議だ。 「ふうん。まあ、俺は無理。パスパス」 エンジンを掛け直すと、本当にその男は眼を丸くした。 「良いの? 良い記念になるのに」 「馬鹿とか会話が成り立たねー」 まだ何か言っていたが、さっさとバイクを走らせた。 どうせ、追いついてこれねーしな。 げーのーじんだとしても、俺はあいつなんて見たことないけど。 嫌いな番組に出ているとしたらミュージシャンだったりして。 俺が一番近づきたくない人種だな。もう二度と、会いませんように。 お互い、名前も聞きそびれたんだから、もう会うこともね―けど。

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