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「あんた、この前、俺をバイクで追い抜かした奴?」 「ああん?」 バイクで? ここのところ忙しくてバイクで走りになんか行ってねーよ。 サングラスをかけて不敵に笑うこの男……、 誰だっけ? 「ほら、俺、あんた誘ったのに、あんなに興味無さげに逃げられてさあ」 「あー? んー? 最後に一人で走った時に見かけたげーのーじん?」 なるほど。 確かにこんなにふてぶてしかったかも。 「てか、お前、何で俺の花屋に無断で入って来てんだよ」 帰れ帰れと手で追い払うが、げーのーじんは凄く楽しそうに口笛を吹いた。 「なんでタイプじゃない椿が気になるのか、ずっと腑に落ちなかったんだが――今日分かった」 「あ?」 「あんたにもう一回、会うためだったんだな」 くるりと視界が反転しどうやら俺は流れるように自然とテーブルへ押し倒されてしまったらしい。不覚。 「なぁ、あんた名前は? 椿の兄?」 あー……、なるほど。 「お前が俺の椿を脅してた『KENN』?」 「脅してたかな。雷也には勿体なくてね。てか俺の椿って、恋人とか言わねーよな?」 むっ。 こいつ、どうみても俺より年下なのにどうして馴れ馴れしいんだ? 「よくも椿を脅してくれたな」 「え?」 KENNが聞き返してきた隙を狙い、テーブルについていた両手を殴り、組み敷かれていた下から脱出した。 そして、状況が飲み込めていないままのKENNの右手を自分側に強く引っ張り、バランスを崩したKENNをそのまま投げ飛ばした。 投げ飛ばされたKENNひっくり返り、ずれたサングラスから天井を呆然と見ている。 「お前身体重い割りには隙だらけだな。本当に椿はこんな奴に負けたのか?」 「あんた……一体?」 不思議がるKENNに腕組みして見下ろしながら笑う。 「椿の父親だ」 「は?」 「父親でイケメンフラワーデザイナー。こう見えて36歳だ」

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