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到着したのは、近くの丘の上。 クリスマスなのに、デートスポットの此処に誰も居ないのは工事中だからだ。 来月にはホテルに変わる此処には道の途中に立ち入り禁止の看板があった。 だがKENNは工事が進んでいないのを知っていたんだろうな。 そんな看板気にもせず、ここにやってきた。 到着するまで笑いっぱなしだったけど。 「あんた、惚れるね。乗れとかエロい」 「んだよ。後ろに乗るより、後ろに誰か乗せる方がー……」 そう言いながら被っていたヘルメットを外し、二、三度頭を降る。 こんなに月って落ちてきそうなぐらい大きく夜空に浮かんだっけ? 吐く白い息がかかるほど、大きな月を見ていたら視界が遮られた。 そのまま、KENNの目が俺を真っ直ぐに降りてきて、 唇が重なった。 暖かい舌を然り気無く侵入させながら、 KENNが無理矢理、俺の視界に入ってきたー……。 「クリスマスに間に合ったな」 「は?」 「0:01だ。五分早く着けば五分はキスしたのに。あんたが来るのにゴネるから」 「クリスマスに乗っかて突然キスすんな。バカが」 「――キスにいちいち許可取る方が馬鹿だよ」 あー言えばこう言う典型的な生意気な野郎だ。 ムカつくから蹴ってやったけど、KENNは嬉しそうだ。 「俺は許可がいる」 「生娘か」 「お前、少しは黙れ!」 苛々する。 自分のペースを崩そうとしないこの雰囲気も。 侵入して来ようとグイグイ来る感じも。 「あんたが黙らせてよ。可愛い唇で」 「拳でいいなら一発で黙らせてやるよ」 拳を握ると、優しく腕を捕まえられた。 「指先の傷は治った?」 先日の薔薇のトゲ抜きの手伝いからは、幾分ましになった指先を見る。 「仕事柄、いつも手先は荒れてるよ」 「クリスマスまでは忙しかったのか? 綺麗な肌がカサカサだし、目も疲れてて――唇も荒れてる」

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